「部下の成長を止める上司」が良かれと思ってやっているNG行動

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部下の成長を願って、丁寧にフィードバックを重ねている。しかし、それがかえって思考力を奪っているとしたらどうだろうか。マーケティングコンサルタントの筆者は、メタ認知力(自分を客観視する力)は「フィードバックされる側」にいるだけでは育たないと指摘する。※本稿は、宮脇啓輔『できる人が大事にしている 複利で伸びる仕事術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を抜粋・編集したものです。

上司の「フィードバック」が

部下の成長を止める原因

 メタ認知とは、つまるところ「自分をよく知る力」。

 自分を知るためには、自分自身に問いを投げかけられるようになる必要があります。

「なぜ自分はこう考えたのか」「なぜこのタイミングでこの行動を取ったのか」と、思考と行動を自問自答し、掘り下げていく力です。

 しかし、自分で深掘りできないと「なんとなく反省した気になって終わる」だけ。

 本質にたどり着けず、自己分析も表面的なままです。

 単に「whyを5回繰り返す」だけでは足りず、視点を変えたり、抽象化したり、アナロジー(類推)を使ったりと、より高次な問いかけが求められます。

 そして、自分よりレベルの高い人たちとばかり一緒にいると、この「自問自答のチャンス」が減ります。わからないことがあっても、すぐに答えをもらえてしまうからです。

 結果として、「自分に問いを立てて、自分で答えを出す力」が育ちにくくなる。

 つまり、「答えを与えられる環境」に慣れてしまうと、自分に問いかける習慣がつかず、その結果、メタ認知力が磨かれない、というわけです。

 私自身、部下との1on1において、こちらから答えや問いを与えすぎてしまい、彼らが「自分に対して良質な問いを立てる力」を育てることを阻害していることに気づいた経験があります。

 私はこれまで、何年も部下にフィードバックをし続けてきました。

 そのなかで気づいたのは、「フィードバックを受けていると、メタ認知は促進されるが、メタ認知力そのものは育たない」ということです。

 つまり、理解は深まっているが、「理解する力」は鍛えられていないのです。

「あれ?この話、前にもしたよな」と思う場面が何度もありました。

 そして、彼らが自問自答できるようにならない原因の1つは、私が答えや問いを与えすぎていることにあるのではないかと思い至ったのです。

 もし彼らにメタ認知力が育っていれば、「自分はいつも答えをもらってばかりだな」「次は自分で考えられるようになりたい」と気づき、「どうすれば自分で答えを出せるようになりますか?」といった質問が出てくるはずです。

 しかし、実際はそうならない。

 それは、常に「フィードバックされる側」にいるからです。

フィードバックする側になれば

自然とメタ認知力が鍛えられる

 私も意識して、答えを言わずに問いを投げかけるようにしていました。

 しかし、相手が答えを出せないと、つい別の角度から質問を重ねてしまう――。

 そうして、どんどん「質問力が高いのは自分のほう」になってしまうのです。

 結果として、部下は一時的に納得できても、「自分で問いを立てる力」が育たない。

 そう実感したとき、私は「フィードバックされる側から、する側に回ること」がメタ認知力を鍛える近道なのだと考えるようになりました。

 フィードバックする側になると、相手を理解し、納得させるために、多くの質問を投げかけます。その過程で問いの精度が上がり、他者への洞察力も深まっていきます。

 つまり、人にフィードバックする回数が多い人ほどメタ認知力が高まりやすいのです。

 フィードバックすることは他者を深く知ることにつながり、他者を知ることは自分を知ることにつながっていきます。なぜなら、他者の考えを深掘りしていくと、自分にはよく理解できない価値観と出会うからです。

 他人の価値観や行動原理を理解しようとすると、「なぜ自分はそう感じないのか」「自分だったらどうするか」などと、自分の思考を照らし合わせることになります。

 他人の悩みや迷いを聞くなかで、「自分はここでは悩まないな」「自分はむしろこう考える」――そんな「ズレ」の感覚が、自分の特性を浮き彫りにしてくれます。

 また、他者の深い話を聞くほど、「自分の常識は案外狭かった」と気づかされることも増えていきます。海外に出て初めて日本の良さを理解できるように、他人の思考に触れることで、初めて自分を客観的に見られるようになります。

 自己理解を深めたいなら、自己分析に閉じこもるよりも、他者に向き合い、他者を深掘りする経験を重ねるべきです。そしてその経験が、思考の柔軟性を生み出します。

行動することでしか

柔軟な思考は生まれない

『ゆるストイック』などのベストセラーで知られる起業家の佐藤航陽さんも、次のように語っています。

「行動しない人間ほど偏見や固定観念が多い。やってみればすぐ分かることも、自分では動かないので思い込みが見直されることもない。不思議な話だけど、思考の柔軟性は行動量に依存してる。」(出典:佐藤氏のX)

 行動とは、他者を知り、自分の思い込みを見直すことでもあります。

 人と深く関わり、フィードバックを重ねることで、自分の固定観念の殻を破り、より柔軟な思考が身につくのです。

 だからこそ、メタ認知力を高めるためにも、若いうちから他者にフィードバックする経験をしておくべきだと考えます。

 たとえ部下がいなくても、自分より経験の浅い人に対してフィードバックをする機会を意図的につくる。会社の後輩でも、学生時代の後輩でも、兄弟でも、あるいは中高生が相手でも構いません。要は、自分が「教える側」になることが重要なのです。

 もちろん最初からうまくできる人はいません。

 トライ&エラーを重ねながら、徐々にコツをつかんでいくしかありません。

 フィードバックとは、できるようになってから始めるものではなく、やる立場に立つことでできるようになるものなのです。

 フィードバックには大きく分けて2種類あります。

 知識やスキルを直接教える「ティーチング」と、対話を通じて相手のなかから気づきを引き出す「コーチング」です。

 最初はティーチングから始めれば十分です。明確に答えがあることを教えるだけでも、相手にとっては価値のある時間になります。

 そして慣れてきたら、「なぜそう思う?」「できている人はどうしている?」「あなたならどうする?」など、問いを使って相手の思考を引き出す練習をしてみましょう。

 この経験を重ねることで自然と質問力が磨かれ、メタ認知力も育っていきます(図1-15)

同書より転載

 もし「自分はあまり相談されない」と思う人は、社内で新入社員や転職者の世話役を引き受けてみるといいでしょう。

「この分野なら自分のほうが少し詳しい」という立場から始めれば、自然とフィードバックの練習ができます。

メタ認知力が欠けていると

起こる自己認識の悲劇

 最後に、メタ認知力が欠けていると何が起こるかについても触れておきます。

 メタ認知力が欠けていると、自己評価と他者評価の乖離が大きくなります。

 このズレが広がると、「自分はイケてる」と過大評価したり、「自分なんて大したことない」と過小評価したりと、極端な自己認識に陥ります。

 特に注意すべきは、マネジメント層が自分を過小評価してしまうケースです。

「自分ができたんだから、みんなもできるはずだ」と思い込むことで、結果的に部下に過剰な期待やプレッシャーを与えてしまう。その結果、部下が自信を失い、メンタルダウンしてしまう――そんなことが現実に起きます。

 謙遜は大切ですが、自分の実力を正確に認知することも同じくらい重要です。

『できる人が大事にしている 複利で伸びる仕事術』 宮脇啓輔 ディスカヴァー・トゥエンティワン

 メタ認知力が高い人は、他者評価と自己評価のズレが少なく、現実的に自分を見られます。だから、謙虚でありながら「勘違い野郎」にはならないのです。

 自分の現在地を正しく把握し、今何を求められているのかを理解できる。

 このバランス感覚こそが、ビジネスパーソンとしての成熟を支えます。

 メタ認知力は、ビジネスにおける「静かな武器」です。

 上の人から学ぶだけでなく、下の世代に教える――その循環のなかでこそ、本当のメタ

 認知力は磨かれます。

「フィードバックは人のためならず」

 それは、最終的に自分を最も成長させる行為なのです。