「普通の葬儀にすればよかった」50代長男の悲劇…人気の家族葬・直葬で大後悔する「4つのトラブル」

写真はイメージです Photo:PIXTA
コロナ禍以降、家族葬・直葬など簡素な葬儀が広く浸透していますが、実はトラブルも多発しています。都内に暮らす高橋さん(50代・仮名)は四国の某所で亡くなった母の葬儀を、弟と相談し直葬で終えました。しかし、この決断がまさかの「葬儀のやり直し」に発展します。本記事ではトラブルの実態を取材しました。
がんの闘病でやせ細った母
死去直前に口頭で「直葬」を希望
四国某所で生まれ育った高橋一馬さん(50代・仮名)は、20年以上前に上京し現在は都内に暮らしています。弟の康太さん(40代・仮名)も長年神奈川県内に暮らしており、父が他界して以降は故郷に残った母・邦子(仮名)さんが、農家を営みながら一人暮らしをしていました。
5年前、母は体調不良が続いたため総合病院で診断を受けたところ大腸がんと診断されました。その後手術は成功しましたが、いくつかの臓器に転移してしまったのです。化学療法で体重が激減しかつて60キロ近くあった体は40キロ台前半に。邦子さんは頻繁に「骨と皮だけになってしまった、誰にも見られたくない」と話すようになりました。
「母はもともと明るく、健康的な人。僕らにすら弱った姿を見られることは嫌そうでした。死の2週間前にも、弟と私の前で『こんな姿見せたくないから直葬でいい』と話していました」
直葬とは、通夜・告別式などの儀式を省略し、遺体を火葬場に直接搬送して荼毘(だび)に付す葬儀形式です。費用は一般的に15万~40万円と、一般葬や家族葬と比べて格段に安いことが知られています。
邦子さんの死後、一馬さんは弟と相談し「母の意志に従おう」と二人で直葬を決断。葬儀社にも相談し、邦子さんが息を引き取った3日後に火葬で見送りました。高橋さん兄弟とそれぞれの配偶者、子どもたちの計8人のみで、献花を手向けて棺を閉じ、静かに終えることができました。
しかし、異変は火葬の翌日から始まりました。
「なぜ知らせてくれなかった」
母の親戚や近所の人から非難の嵐
邦子さんの実家の親族から一馬さんの携帯に着信があったのです。開口一番、「なぜ知らせてくれなかったのか」という言葉が飛び出しました。
「身内の死に目に会えなかった。都会に行った者は常識がない。せめてお別れくらいさせてほしかった」
「直葬なんて聞いたことがない。あなたたちは一体何を考えているの」
あまり面識がない母の実家からの非難は1時間以上続きました。翌日には父方の叔父からも連絡があり、「先祖代々のやり方を無視するとはどういうことか」と強い口調で責められたのです。
さらに深刻だったのは近所からの反応でした。邦子さんは地元の婦人会に長年所属しており、地域のコミュニティーと深くつながっていました。訃報を知った近隣住民が次々と自宅を訪ね、「お線香も上げられなかった」「なぜ教えてくれなかったのか」との言葉をぶつけてきたのです。
2週間の休暇を取って
説明して回るも「葬儀のやり直し」
やむを得ず、一馬さんは慶弔休暇を超える2週間の休暇を取得。親族やご近所の方に事情を伝え歩きましたが、葬儀をやり直すべきだと言われ続けました。
特に母方の親族から強く葬儀のやり直しを求められたため、兄弟は「弔い直し(葬儀のやり直し)」を決断しました。
「母の意志を守ろうとした結果、2度葬儀をすることになってしまいました。母の言葉を尊重したと伝えても、親族が怒ってしまったのでやむを得ません。こんなことなら最初から普通の葬儀にすればよかったです」
家族葬や直葬など
簡素な葬儀が増えた背景
家族葬・直葬は今や日本の葬儀の主流となりつつあります。株式会社鎌倉新書が実施した2024年の調査では家族葬は50%、直葬・火葬式の割合は9.6%に達しています。つまり、多数の親族の手を借りない葬儀が過半数を超えているのです。

出典:鎌倉新書「いい葬儀」の 「お葬式に関する全国調査からみる葬儀費用の推移・変化(2013年~2024年)」

出典:鎌倉新書「いい葬儀」の 「お葬式に関する全国調査からみる葬儀費用の推移・変化(2013年~2024年)」
近年、都市部を中心に「家族葬」や「直葬」といった簡素な葬儀が主流になりつつあります。多額の費用をかけず、身内だけで静かに見送りたいというニーズは、現代のライフスタイルや経済状況に合致しているといえるでしょう。
また、新型コロナウイルス禍での「密を避ける」選択が習慣化した側面もあるとされており、「大勢が集う葬儀はしない」という価値観が定着したと考えられます。
一方で、複数の葬儀専門家への取材では、家族葬・直葬をめぐる親族・近隣とのトラブルが増えているとの声もあります。
簡素化される葬儀
しかし地方には独自の風習も
地方においては今なお独自の風習が残っている地域も少なくありません。「葬儀は家と家とのつながりを示す儀式である」という価値観は根強く、親族だけでなく近隣住民や自治会が運営を手伝うケースもあります。
こうした地域で、都市部と同じ感覚で独断的に「家族葬」を強行してしまうと、後になって大きなトラブルに発展することがあります。
■家族葬・直葬で起きやすいトラブルの主な例
1.「なぜ呼ばれなかったのか」という親族・友人からの不満
2.菩提寺(ぼだいじ)への未連絡による戒名・納骨拒否
3.地域コミュニティーとの関係悪化(特に地方・農村部)
4.後日の弔問ラッシュで対応に追われる
「なぜ、声をかけてくれなかったのか」「長年お世話になったのに、最後のお別れもできないのか」といった近隣住民からの反発を防ぐにはどうすればよいでしょうか。
「本人の希望」と「残される人々の感情」
どちらも大切にする葬儀とは
本人の希望と残された人々の感情を対立させないために、次のような工夫も考えられます。
1.本人の希望を「書面」で残す
2.生前から菩提寺や地域文化を事前に確認する
3.「後日のお別れの場」を設ける
4.決定を「家族だけ」で抱え込まない
菩提寺がある場合、事前連絡なしに葬儀を済ませると、戒名を授けてもらえず納骨を断られるケースがあります。また、地方では葬儀が地域の行事という慣習が残る地域もあり、形式の選択が近所付き合いに直接影響することも。故人が暮らしていた地域の文化を、生前のうちに把握しておきましょう。
また、家族葬や直葬を決断する場合、参列を断った方々に対して後日「しのぶ会」や自宅での茶話会を設けることで、別れの機会を補うことも可能です。葬儀の簡素化と、周囲への配慮を両立できる現実的な選択肢と言えるでしょう。
葬儀の形式を遺族だけで決め、事後に報告するだけでは「なぜ、相談してくれなかったのか」という感情的反発を生みやすくなります。近しい親族に声をかけながら、理想の葬儀を目指すことが大切です。
※プライバシー保護のため、登場人物に関する情報の一部を変更しています。
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