スズキ「フロンクス」買っているのはどんな人?

2024年10月16日に発売されたコンパクトSUV「フロンクス」(写真:スズキ)
SUV市場は成熟しきったのだろうか。
【写真と図表浮き彫りになったスズキ「フロンクス」の“実態”
街を走るクルマの多くがSUVになり、各社のラインナップも出そろった感があるが、それでもSUVの新型投入が続く。
2024年10月に発売されたスズキ「フロンクス」も、そんなSUVの1台である。
スズキによると、フロンクスの特徴は「力強さと流麗さを際立たせた新しいクーペスタイルと取り回しの良さを備えた、新ジャンルのSUV(略)」だという。
では、スズキのラインナップの中で、フロンクスはどんな役割を果たしているのだろうか。
今回はフロンクス購入者を同じスズキ車購入者全体と比較し、その特徴をあぶり出していく。また、同じスズキのコンパクトSUVである「クロスビー」も比較対象として取り上げる。
<分析対象車種・サンプル数>
・フロンクス:126名
・スズキ全体:6706名
・クロスビー:166名
※いずれも分析対象は新車購入者のみ
※「スズキ全体」にフロンクスとクロスビーは含まない
※フロンクスとの分析期間が離れすぎないよう「スズキ全体」とクロスビーは2023年1月以降購入者とする
なお、使用データは市場調査会社のインテージが毎月約70万人から回答を集める、自動車に関する調査「Car-kit®」である。
フロンクス購入者の年齢と性別
いつものように、年代構成から見てみよう。20代と30代を足し合わせると、フロンクス、スズキ全体、クロスビーともに22~24%程度で差はない。
フロンクスは40代がやや少なく、その分60代以上が少し多くなっているが、全体を通して3者の間に大きな差はないといえる。

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ところが男女比は大きく異なり、スズキ全体が男性:49%、女性:51%、クロスビーは同39%:61%であるのに対し、フロンクスは同80%:20%と男性が圧倒的に多かった。
クロスビーは、購入した人の5割以上が「かわいい」「カジュアル」というイメージを抱いていることもあり、女性オーナーの多いSUVとしてのポジションを築いている。

「クロスビー」は2025年10月に大幅改良を実施しているが、今回のデータの多くは写真の旧タイプとなる(写真:スズキ)
なお未既婚の分布は、スズキ全体(未婚:26%、既婚:64%、離別死別:10%)、クロスビー(未婚:29%、既婚:66%、離別死別:5%)、フロンクス(未婚:39%、既婚:56%、離別死別:5%)。
スズキ全体とクロスビーが似た構成を示すのに対し、フロンクスは未婚が多い特徴が表れた。
フロンクスの前に乗っていたクルマ
顧客構造を理解するために、購入する前に乗っていたクルマ、「前有車」を見てみよう。
メーカー単位で見ると、スズキ全体は「スズキ→スズキ」が46%と大きい。軽自動車を中心に、同一メーカー内での買い替えが強いという、スズキらしい姿だ。
一方、フロンクスでは、「スズキ→スズキ」が39%まで下がる。当然、これは他メーカーからの乗り換えを意味しており、具体的にはトヨタ16%(スズキ全体では12%)、日産12%(同7%)、マツダ8%(同3% ※表の圏外)とトヨタ、日産からの乗り換えが目立った。
ちなみに、クロスビーはさらに「スズキ→スズキ」が少なく、26%まで下がる。

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ここで象徴的なのはダイハツだ。スズキ全体ではダイハツからの乗り換えが15%あるのに対し、フロンクスでは圏外の5%未満にとどまる。つまりフロンクスは、軽自動車からのステップアップではなく、他メーカーの登録車(普通車)からの乗り換えが多いというわけだ。
前有車のボディタイプも確認すると、スズキ全体では軽自動車からの乗り換えが6割を超えるのに対し、フロンクスは3割弱にとどまる。その分、SUVとハッチバックからの乗り換えが多い。

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クロスビーは、スズキ全体よりもフロンクスと似た傾向を示す。とはいえ、フロンクスがSUVやその他の登録車からの乗り換えが多いのに対し、クロスビーはハッチバック、軽ハイトワゴン・スーパーハイトワゴンが多かった。
これはフロンクスとクロスビーのボディサイズの違いをそのまま映し出しているとも言えるだろう。

「クロスビー」より大きいとはいえ「フロンクス」のボディサイズは全長3995mm×全幅1765mm×全高1550mmとコンパクト(写真:スズキ)
つまりフロンクスは、軽自動車から登録車へのステップアップ層を受け止めつつ、他メーカーを含めたコンパクトSUVからの買い替えニーズを満たしているのだ。
軽自動車から来た層にとっては「少し上のサイズ・質感」に手が届くことが魅力であり、SUVから来た層にとっては「大きすぎない・高すぎない」現実解として映る。
フロンクスは何と比較されたのか?
次は視点を変えて、購入時の「比較検討状況」を紹介する。
他に比較検討したクルマがあった人はフロンクス:65%で、スズキ全体:48%、クロスビー:49%を大きく上回る。
フロンクスは、デビューからあまり時間が経っていないこともあり、少なくとも現状は、指名買いというより、比較されながら商品特徴で勝ち残るタイプであると言える。
最後まで比較検討したメーカーである「最終比較メーカー」を見ると、フロンクスはトヨタ30%(スズキ全体14%)、日産14%(同5%)、スバル9%(同1%)と、異なる傾向を示す。

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さらに車種レベルで見ると、フロンクスの比較相手がより鮮明になる。目立つのは、ホンダ「WR-V」の9%。同じ“インド発”で、価格面でもぶつかりやすいのだろう。
そのほか、トヨタ「ヤリスクロス」、同「カローラクロス」と、「実用×価格」で強い車種群と多く比較されている。
それでは、購入した人たちが実際のところいくら支払っているのか。「値引き前車両本体+オプション価格」「値引き額」「下取り額」「最終支払い額」の各データを下記に示している。

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最終支払い額の平均は、スズキ全体が185万円なのに対し、フロンクスは266万円と、約80万円高い。軽自動車中心のスズキのラインナップから見れば、フロンクスが高価なのは当然だ。
なおクロスビーは244万円であるので、フロンクスはそこから1割程度高い商品となる。
この価格帯での比較相手は、先ほど見た通りヤリスクロス、WR-V、カローラクロスなどである。フロンクスはスズキが得意としている軽自動車の市場の延長ではなく、ここ数年間、「ソリオ」などを中心に販売を伸ばしている登録車市場において、価格と価値の釣り合いで勝負していると言えるだろう。

ボルドーの合皮内装を採用して落ち着いた上級感を演出する「フロンクス」のインテリア(写真:スズキ)
SUV市場の競争は激しい。しかし、裏を返せばそれだけ需要旺盛でもあるので、新たなポジションを獲得できれば、スズキのラインナップにおいて新たな伸びしろを提示することにつながる。
フロンクスは何を武器にしているのか
「購入時の重視点」は、フロンクスの勝ち筋をストレートに示している。「スタイル・外観」「内装デザイン」「車両価格」「運転する楽しさ」でスコアが高かった。

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そのほかにも、スズキ全体と比較して高く出ているのは、「シートの座り心地」「安全性」。クロスビーはスズキ全体よりは高いがフロンクスほどではない、といった項目が多い。
フロンクスが、よりコンパクトなクロスビーだけでなく、軽自動車が多くを占めるスズキ全体よりも、「車両価格」の重視度合いが高いのは興味深いところ。
これは、フロンクスが主にコンパクト~ミドルサイズのSUVと比較されながら購入されており、競合車種と比べた際のコスパの良さが訴求点として届いているためであろう。そのため、価格を重視する層を取り込むことができているのだ。

スマートフォン連携メモリーナビを標準装備しており、コストパーフォーマンスは高い(写真:スズキ)
ほかにもフロンクスでは、運転に関する項目でスコアが高く出ている。上記表では割愛しているが、「安全運転支援機能」32%(スズキ全体:18%)、「高速走行時の安定感」18%(同:4%)、「悪路や雪道の走破性」19%(同:7%)など。
移動の道具としての合理性だけでなく、運転まわりの快適性・安全性も重視していることがわかる。
ロングセラーモデルが多いスズキの中で
ここまでフロンクス購入者の特徴を、スズキ購入者全体と比較することで確認してきた。
フロンクスは他メーカーからの乗り換えが多く、ほかのスズキ車とはまったく異なる価値観で選ばれていることが改めてあぶり出された形になった。
キャラクターとしては車両価格を重視する層に刺さっており、SUVの中で激しく比較されながらも、外観デザイン、内装デザインもしっかりと評価された後に購入されている。
ソリオやスイフト、SUVであればクロスビーなど、スズキにはロングセラーモデルが複数ある。フロンクスがラインナップに加わったことで、よりサイズの大きいSUV領域でも存在感を強く発揮することができれば、スズキの顧客像の拡張が見込めるだろう。