トヨタ「ウーブン・シティ」は100年後も存続しているのか?永遠に未完成の町「強さ」と「脆さ」

まず、ウーブン・バイ・トヨタのシニア・バイスプレジデントでウーブン・シティ マネジメントのヘッドを務める豊田大輔氏は、こう答えた。

【写真】旧・東富士工場をリノベーションして作られたウーブン・シティの「インベンター ガレージ」

「100年後、自分は生きていませんので、(ウーブン・シティの状態について)確認ができません。ウーブン・シティという、この場所があったことによって100年後の未来が変わっていく取り組みをしていきたい。この場所自体を存続させることが、いつのまにか目的に変わらないように、この場所の目的をぶらさずに、もっと良い社会の実現に貢献していきたい」

では、ウーブン・バイ・トヨタが独自開発したAIで、今回のトークショーでは司会進行役から“豊田章男君”と命名されたAIシステムはどう答えたのか。

進化し続ける永遠に未完成の町

「100年後のことは、誰にも断言はできないと思う。だけど、目指している姿はあるんです。ウーブン・シティは最初から、ただ完成して終わる町ではなくて、進化し続ける永遠に未完成の町として置いているのです」

さらに次のように続けた。

「それに、未来のモビリティのテストコースであり、人が暮らしながら技術を鍛える場でもある。以前から、100年続く町という将来像も話してきました。ですから、建物が残るかより、そこで育った思想や仕組みが100年後にも生きていたら、私は(ウーブン・シティが100年後も)存続していると言っていいと思う」

進化し続ける永遠に未完成の町, ヨタハチやソアラが作られた工場の跡で, 次の100年に向けて何をつないでいくのか?, 「強さ」を感じた一方「脆さ」も

AI豊田章男君、豊田大輔氏、大石耕太氏によるトークセッション(写真:トヨタ自動車)

ウーブン・シティは、2025年秋に誕生した、トヨタが独自に開発する未来に向けた実験都市だ。

筆者は、同年9月25日の報道陣向け公開で、居住・オフィス・ショーケース等で構成する第1次実施地域「フェイズ1」を訪れ、さまざまな実証実験をウーブン・シティ内で行うインベンターズの皆さんから今後の方針などを聞いた。

その際、セレモニーでは豊田章男トヨタ会長から「KAKEZAN(カケザン)」という言葉が披露された。

KAKEZANとは「人と人が織りなす社会」の中で、「人と人」「人とこと」「こととこと」など、ウーブン・シティという場に人が集うことでイノベーションへと結びつけていく、という考え方だ。

あれから約7カ月が経ち、フェイズ1には約100人のウィーバーズ(住民)が暮らし、さらに今回は「カケザンにより事業化を加速させるための仲間づくりの場」として、「インベンターガレージ」が生まれた。

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インベンター ガレージの公開展示(筆者撮影)

これは「インベンターの活動に不可欠なエッセンシャル機能である、『働く』『作る』『試す』『交流する』『生活する』をワンストップで提供できるプロダクト・サービスの開発拠点」だと位置付けられている。

エントランスエリア、モノづくりエリア、ラボエリア、コワーキングエリア、宿泊エリア、テストエリア、そしてコミュニティエリアの7つのエリアで構成されており、ここでのキーワードは「ヘリテージ×イノベーション」だ。

ヨタハチやソアラが作られた工場の跡で

インベンターガレージの建物は、トヨタ自動車東日本のプレス加工など量産車生産を行っていた東富士工場そのもので、それをベースに大規模にリノベーションしている。

床のところどころに傷があったり、壁に大型プレス機によるオイル染みを残したりと、直感的にヘリテージを感じ取れる工夫がある。

自動車生産拠点としては、旧:関東自動車工業・東富士工場として1968年から稼働を開始し、トヨタ自動車東日本・東富士工場への移行後も含めて、合計52年間で約7000人が従事してきた。

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ヘリテージを感じさせる織機も展示されていた(筆者撮影)

「スポーツ800」「センチュリー」「AE86」(カローラ・レビン、スプリンター・トレノ)、「マークⅡ/チェイサー/クレスタ」「セリカ」「クラウンワゴン」「コンフォート」「ソアラ」「カローラフィールダー」「ポルテ/スペイド」「カローラ スパシオ」など、752万台がこの地から巣立っていったのだ。

だから、この場所に立っていると「ものづくり」という言葉が、とてもしっくりくる。

インベンターズが挑んでいるさまざまなプロジェクトについて話を聞いたが、どの話も筆者自身の中で将来の姿が立体的に感じられた。

特に、トヨタが「新ソフトウェア開発プラットフォーム」としている「アリーン」については、これまで東京・日本橋のオフィス街にあるウーブン・バイ・トヨタ本社や、トヨタ自動車東富士研究所で行われた「テクニカルワークショップ」、アリーンを初採用の量産車「RAV4」の新車発表会、さらにジャパンモビリティショーなどで説明を受けてきたものの、アリーンを活用したモノやコトの社会実装の様子が掴み切れない印象があった。

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ウーブン・シティの全容模型(筆者撮影)

それが今回、アリーンとの関係が深いAI(人工知能)、データセキュリティ、ロボティクス、物流や生産現場でのデジタルプラットフォームといった領域の実証実験について、ウーブン・シティでどのように展開するのかを各プロジェクト担当者と意見交換する中で、アリーンの“存在意義”がようやく立体感を持って見えてきたのだ。

そのほか、新たに加わった「AIロボット協会」「第一興商」「Joby Aviation」「トヨタファイナンシャルサービス」など、インベンター各社の関係者ともじっくり話すことができたが、その中にはウィーバーとして「フェイズ1」地区で暮らしている人もおり、ウーブン・シティでの出来事を“私事”として話しているのがわかった。まさに、地元民の声である。

次の100年に向けて何をつないでいくのか?

26年は、トヨタの原点である豊田自動織機の創立から100年を数える年だ。

ウーブン・バイ・トヨタの隈部肇CEOは「(自動織機からクルマまで)この100年間つないできたのは、技術や資本だけでなく『誰かのために』という思いだったと、私は思っています」

このように発言したうえで、「では、次の100年に向けて、私たちは何をつないでいくのか」と問いかけた。

「トヨタがつないできた歴史と思いを受け継ぎ、新たなイノベーションや発明を起こし、『幸せの量産』へとつないでいく。それが、私たちウーブン・バイ・トヨタの存在意義だと考えています」という考え方を示した。

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「インベンターガレージ」の外観(筆者撮影)

さらに「これまでと変わらないフィロソフィーを土台に、これまでと違うスピード、違うスケール、違うアプローチで『未来の当たり前』をつくっていく」と、まったく新しいチャレンジへの決意を表明した。

「強さ」を感じた一方「脆さ」も

隈部CEOも指摘したが、ウーブン・シティは、インベンターガレージで多くの人が体感できるように、トヨタが受け継いできた“ヘリテージ”と、ウィーバーズとインベンターズがこれから切り開こうとしている“イノベーション”という名の未来との「交点」だと思う。

そのうえで、ウーブン・シティという都市には、未来への希望を感じさせる「強さ」を感じるのだ。

ただし、その一方で「脆さ」もあると感じる。

ここで言う「脆さ」とは、人の心の脆さであり、人間味という言葉に言い換えることができるだろう。それほどまでに、この地は「人中心」という「人らしさ」の本質を追求するための「試練の場」なのかもしれない。

これからも引き続き、ウーブン・シティの進化を見守っていきたい。