日本やアメリカの脅威になる? 台湾「鴻海(ホンハイ)」が変える自動車産業の次世代構造
自動車部品や電動車等に関する台湾最大級見本市の「TAIPEI AMPA/ E-Mobility Taiwan」(2026年4月14日〜17日:台北南港展示館)を取材し、台湾自動車産業界の今後について考えた。
【写真】三菱自動車にも供給される「ホンハイ」のEV
会場内でホンハイの存在感はとても大きく、開催初日から展示車両の詳細を撮影するメディア関係者が多かった。
展示されたのは、ホンハイが「モデル」と称する各種EVと、特定ブランドからすでに量産されているEVである。
ホンハイは、Apple、Amazon、Google(Alphabet)など、IT大手を顧客に持つ世界最大のEMS(エレクトロニクス・マニュファクチャリング・サービス)企業で、年間売上は30兆円を超える。
そんな巨大企業が進めるEV事業がここへ来て一気に加速しているのだから、メディアの注目が集まるのは当然だ。
東京で開催された説明会にて
時計の針を少し戻すと、東京の帝国ホテルで25年4月9日、鴻海科技集団主催セミナーとして「ホンハイEV戦略説明会」が開催された。
登壇したのは、ホンハイグループでEV関連事業のCSO(チーフ・ストラテジー・オフィサー)を務める関潤(せき・じゅん)氏だ。

東京での説明会で「モデルA」の解説をする関氏(筆者撮影)
COO(チーフ・オペレーティング・オフィサー)の職を含めて日産で33年、さらにニデック(旧:日本電産)のCEO(最高経営責任者)など3年間を経て、ホンハイに籍を移した人物である。
公開された内容は、各モデルの概要とそれを活用したビジネスモデルだ。
モデルは、小型車から小型・大型バス、小型トラックまでフルラインアップしている。以下、順に紹介する。
■モデルA
グローバル市場でのB/CセグメントのMPV(マルチ・パーパス・ビークル)。東南アジアを中心に各地へ広げる。27年の上期に日本導入予定とした。
■モデルB
Cセグメント級のクロスオーバーSUV。ボディサイズは全長4315mm×全幅1885mm×全高1535mm、ホイールベース2800mm。
後輪駆動ベースで、モーターは最大出力172kW・最大トルク340Nm。4輪駆動の場合は344kW・680Nm。バッテリー容量は58kWhで満充電での航続距離は500km。内外装のデザインは、イタリアの老舗カロッツェリアであるピニンファリーナが担当した。
当初、台湾で25年下期に、また日系メーカーでは26年下期にオセアニア向けで導入すると公表していたモデルだ。
■モデルC
C/DセグメントSUV。全長4695mm×全幅1895mm×全高1625mm、ホイールべース2920mm。モーター性能はモデルBと同じ。バッテリー容量は58kWhと83kWhがあり、航続距離はそれぞれ500kmと700km。

C/DセグメントのSUV「モデルC」(筆者撮影)
23年12月から生産を開始しており、モータースポーツでは24年のアジアクロスカントリーラリーに出場した実績がある。2025年第4四半期には北米向け輸出開始としていた。
■モデルD
高級ミニバン。こちらもピニンファリーナのデザインで、全長5195mm×全幅1995mm×全高1785mm、ホイールベースは3200mm。

ラージサイズミニバンの「モデルD」(筆者撮影)
エアサスペンションで車高が50〜100mmの幅で調整可能であるほか、後輪操舵機能によって最小回転半径を4.99mに抑えたのが特徴だ。27年にアメリカに導入予定としている。

「モデルD」の車内は「アルファード」よりレクサス「LM」のように豪華(筆者撮影)
■モデルE
高級セダンであるが、ボディ寸法や販売予定などについては未公開だった。
■モデルU
小型バス。全長6990mm×全幅2080mm×全高2650mm、ホイールベース3995mm。台湾では、26年第1四半期、そして日本では27年第3四半期に導入するとしていた。

日本にも導入されるという小型バスの「モデルU」(筆者撮影)
そのほか、大型EVバスの「モデルT」は22年に台湾で導入済みで、27年に日本導入との記載があった。
ビジネスモデルとしては、上記の各モデルをベースとして、自動車メーカー等向けにホンハイが自社工場で生産するケース、または自動車メーカー等の生産拠点でホンハイの技術を活用して生産するケースなど、顧客の要望によってケースバイケースで対応するとした。
なお、東京での説明会開催後、三菱自動車工業がオセアニア向けにEVを導入することを明らかにしており、これがホンハイ・モデルBに該当する。
また、三菱ふそうとホンハイは26年1月22日に記者会見を開き、バス事業に関する新会社を26年後半に立ち上げ、三菱ふそうの富山工場で「モデルT」の生産を始めるほか、次いで「モデルU」導入に進む計画であることを明らかにしている。
Foxconnに由来するFoxtronブランドも
話をTAIPEI AMPA/E-Mobility Taiwanに戻そう。
今回、展示されたのは、乗用車ではモデルC、モデルBをベースとした量産モデル「BRIA(ブリア)」、モデルD、商用車ではモデルUと小型EVトラック「ET35」もあった。

商用トラックの「ET35」(筆者撮影)
さらに、モーター、バッテリーセル、バッテリーモジュール、ADAS(先進運転支援システム)などの技術展示もあり、ホンハイがサプライチェーンも含めたEVトータルパッケージ事業を構築している様子を印象付けた。
ブリアについては、ホンハイ傘下の鴻華先進科技が立ち上げたブランド、フォックストロン(Foxtron)を名乗る。ホンハイの英語企業名であるフォックスコン(Foxconn)に由来するネーミングだ。

三菱自動車へも供給される見込みの「モデルB」をベースとしたフォックストロン「ブリア」(筆者撮影)
このブリアは、外観はプレゼン資料で見ていたモデルBの画像そのままで、ピニンファリーナらしい先進的かつ斬新なデザイン手法で人目を引いていた。
一方で、車内はシンプルなデザインとしていたのが印象的だ。これは、OTA(Over The Air)によるソフトウェアのアップデートによって機能を拡充するために、飽きのこない意匠を心がけたのだと推測する。
ブリアの価格は、後輪駆動車が89万9000台湾元(1台湾元=5円換算で、約450万円)で、日産「リーフ」と同程度である。
OEM供給を進化させた次世代自動車産業体系
こうしたホンハイのEV事業については、「ホンハイが得意なEMS的な発想が、EVでも通用するのか?」という声が自動車産業界から聞こえてきた一方で、アメリカを筆頭にEV市場普及のめどが立たない、いわゆる“踊り場”にある状況を踏まえると、自動車メーカーから見て実質的な外注であるホンハイ側のビジネスモデルがハマるケースが増えているとも言えるだろう。

同会場で技術展示も行っていた(筆者撮影)
台湾の自動車市場の規模は近年、40万台半ばで推移している中、ホンハイによるEVの基礎技術、コンポーネンツ、そして生産技術を海外に販売するという新しい発想が実に新鮮に映る。
これまでOEM供給と呼ばれてきた、他社ブランドを製造するビジネスモデルは、日本では軽自動車で広がったほか、オープンカーなどの少量生産でイタリアのカロッツェリア各社が事業化した事例がある。
そのうえでホンハイのEVビジネスモデルは、こうしたOEM供給をさらに進化させた次世代自動車産業体系と言える。
日本の自動車産業界としても、ホンハイの顧客になるだけではなく、日本の自動車産業構造を抜本的に変えるための“教訓”としてホンハイの事例を精査する必要があるのではないだろうか。