ホンダよ、おまえもか! 4輪事業「1664億円の赤字」の衝撃 日産との統合破談から1年……両社を襲う“火の車”と中韓勢に呑まれる恐怖

世紀の大合併と騒がれながら、結局“破談”となったホンダと日産の経営統合。あれからおよそ1年。今度はホンダが大幅な減益を発表。「ホンダよ、おまえもか!」と誰もが思った今回の減益発表。ホンダと日産にいったい何が起きているのか!?
※本稿は2026年3月のものです
文:井元康一郎/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2026年4月10日号
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日産の次はホンダ! いったい何が?

2026年3月期 第3四半期 決算説明会に出席した(左から)本田技研工業株式会社 執行職 経理財務統括部長 川口正雄氏、同取締役 代表執行役副社長 貝原典也氏、同取締役 執行役常務 藤村英司氏
日本の自動車産業史上最大の合併劇かと言われながら、2025年2月に“破談”となったホンダと日産自動車の経営統合。
それから1年が過ぎる間に世界の自動車業界の様相は劇的に変化した。当時はホンダによる救済という論調の報道が大半を占めていたが、実はホンダの四輪事業もずいぶん前からほとんど利益を出せていないという状況が続いていた。
それがトランプ関税、環境規制の目まぐるしい変化、中国の貿易戦争などさまざまな要因によって、大赤字という形で露呈してしまったのだ。
ホンダの2025年度第3四半期(4~12月)の決算を見てみると、売上高は15兆9756億円と前年同期に対して微減にとどまったが、営業利益は5915億円とほぼ半減。四輪車事業の利益が5690億円も減り、1664億円の赤字になったのがその元凶だ。
一方の日産も出血が止まらない。ホンダと同時期でみると営業損失が101億円。これ自体はそれほど大きい傷に見えないが、四輪車事業の営業損失は2341億円と膨大。それを販売金融の利益で埋めて、ようやく赤字を101億円にとどめた格好である。
自力再建自体が崖っぷちにある日産、それを救済するどころか自分の四輪事業の台所が“火の車”というホンダ。これ以上時間を浪費していては両社の協業どころか、そのうち韓国のヒョンデあたりにまとめて食われてしまってもおかしくないというのが実情なのだ。
両社ともなぜここまで窮地に追い込まれた?

日産は2026年夏デビューを予定する新型エルグランドの売れゆきが大きく注目される
ここで疑問が起こる。なぜホンダ、日産はここまで退勢に追い込まれてしまったのだろうか。
まずは経営方針の硬直性がある。両社とも四輪車の採算性が急に悪化したわけではなく、それを食い止めなければ先がないことは前々からわかっていた。
にもかかわらず、両社はそれぞれ「自分たちが本気を出しさえすれば商品力でライバルに勝てる」という根拠のない自信のもと、コスト低減や新技術の実用化を軽視して独善的な商品開発を推し進めた。
結果、日産は北米で人気を上げられず、ホンダは中国でBEV(バッテリー式電気自動車)を含めた販売が壊滅するなど、火の手を広げてしまった。
思い込みによる決め打ち経営は非常に危険で、それを外した時に次の手が打てない。敵を知り、己を知れば百戦危うからずという孫子の格言があるが、敵を知らず、己を知らなかった両社が敗れるのは必然だったといえる。
そんなホンダ、日産にもはや復活の目はないのかというと、そんなことはまったくない。ベースとなる基礎技術は両社とも充分に持ち合わせているし、年間の研究開発費もホンダの四輪部門、日産ともに年間6000億円レベルを維持している。自動車メーカーとしての実力値は決して低いものではない。
日本勢同士で統合するほうがいいのでは?

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だが、ここからの生き残りとなると話は違ってくる。競争力を回復させるには両社、コストを劇的に下げる必要がある。
日産は2026年度第3四半期までの売上高に占める原価の割合が優良経営のボーダーラインである80%を大きく超え、88%に達した。
売上は8兆5000億円あるのだが、研究開発費を含む原価が7兆5000億円かかっており、人件費や広告宣伝費などを差し引く前の総利益が1兆円しか残らなかった。これでは営業利益を生み出しようがない。
ホンダの売上に占める研究開発費および製造原価の割合は82.5%と日産よりは幾分マシだが、これは業績絶好調な二輪を含んでいるためで、四輪のみだと日産と状況は大きく変わらないものとみられる。
この高コストを抜本的に改善するためには生産規模を上げる必要があるが、第3四半期までの販売台数はホンダが256万台、日産が225万台とピーク時に比べて大幅に減っており、単独でスケールメリットを得るのはもはや不可能な領域に達しつつある。

販売台数は少ないが、スポーツモデルは両メーカーのイメージ戦略に大切な存在
両社は2025年の経営統合破談で遺恨を残したが、意地を張り通して中韓に呑み込まれるよりは、少しは気心の知れた日本勢同士で融合したほうがマシだろう。経営統合に向けた再交渉の噂がささやかれるゆえんだ。
もっとも、統合によって原価低減や自動運転、電動化など先端技術の共有化を行ったからといって、それだけでホンダと日産がそれぞれ活力を取り戻せるわけではない。それによって生み出される商品が世界の顧客に受け入れられるかどうかが問題だ。
ホンダと日産が非常に似ているのは、自分のブランドに顧客が何を期待しているかということを見失っているということだ。
年産300万台クラスというのはトップグループではないが小規模でもないため、商品開発で万人受けが求められるのはある程度仕方がない。が、トップグループと同じキャラクターのクルマを作っていては、最終的にはトップメーカーの餌食になる。
燃費も大事、電動化も大事、ソフトウェアも作り込まなければいけない。大変なことではあるが、そのうえで顧客が日産を、ホンダをあえて選ぶようなクルマをどう作るか。まさに今、それが問われている。