動画の投稿は深夜2時50分…YouTubeの定説を無視した「エガちゃんねる」が10億回再生を達成できた、シンプルすぎる理由

Photo:SANKEI
2020年2月に開設し、5年で登録者数460万人超(2025年3月時点)を記録したYouTube「エガちゃんねる」。江頭2:50の魅力や企画力に加え、投稿時間・頻度・編集など独自の手法で成長を遂げた。数字を伸ばしたプロデューサーの戦略と、江頭のブレない姿勢に迫る。※本稿は、藤野義明『エガちゃんねる 10億回再生 下品の流儀』(宝島社)の一部を抜粋・編集したものです。
深夜2:50投稿・テレビ編集・週2更新…
エガちゃんねるの「逆転思考」
「エガちゃんねる」の総合演出として、時にユーチューバーが集まるカンファレンスのような会合でスピーカー役になる機会があります。といっても、「エガちゃんねる」はユーチューブの常識とは真逆のやり方だったりするので、一般的な視点でタメになる話がそもそもなかったりもするのですが……。
「再生数を上げるためには何時に投稿するといいですか?」といった質問をされても、どうお答えしていいのやら、という感覚です。
一般的に、19時から21時がユーチューブのゴールデンタイム、と言われていることは知っています。カンファレンスでも、ユーチューブコンサルタントみたいな人が「19時~21時です」と答えている場に遭遇したことがあります。
でも、僕にはどうもピンときません。みんながみんなその時間帯に投稿したら、もうそこはゴールデンというよりも、競争の激しいレッドオーシャンではないでしょうか。
ちなみに「エガちゃんねる」の場合、動画投稿はほとんどの人が起きていないであろう、深夜2時50分。こんな時間帯に投稿するチャンネルなんてまずありません。これは考え方によっては、次のゴールデンがやってくるまでは競争相手のいないブルーオーシャンとも言えます。
たしかに、公開直後のド深夜は再生回数が伸びにくいですが、朝起きてから観る人もいるし、朝・夕の通勤時間帯に観る人もいれば、お昼休みに観る人もいる。この長時間はライバルが少ない状況なのではないでしょうか。
そもそも、「定説」や「マーケティング」は、前例を踏まえて導き出されるもの。でも、何か新しいことに挑戦する場合、前例を踏まえた「マーケティング」理論だと、それはもう遅いのではないでしょうか。もはやそれはチャレンジでもなんでもない。
動画公開の時間帯だけでなく、「テレビ的な編集は嫌われる」と言われていた中、そんなことは無視して、自分のストロングポイントであるテレビ的な編集で勝負してみました。
また、定説により「ユーチューブは毎日投稿したほうがいい」が当たり前でしたが、テレビクオリティの編集をしようとすれば、毎日投稿は無理。なので、チャンネル開設当初は週3回の投稿、それでもカツカツで余裕がなかったので、すぐに週2回の投稿に変更しました。
最近のユーチューブは全体的に、週1回や週2回アップのチャンネルが増えてきたと感じます。その点はひょっとしたら「エガちゃんねる」の影響も少しはあるのかもしれません。
「壁」にぶち当たりまくり
ユーチューブで花開いた日
カンファレンスのような場に出席した際に、ユーチューブのイロハよりも大事なこととして、考え方を伝えることがあります。
先日は参加者から「やりたいことがあるけどいろんな壁があってどうすれば……」というような相談をされました。その時に僕が話したのが、「一見『壁』に見えるもの、それは次のステージへの『ドア』かもしれない」という考えです。
「エガちゃんねる」は、誕生までにさまざまな「壁」にぶち当たりました。
そもそも、江頭さんと何か面白いことをしたい、と企画書を作っても、コンプライアンス至上主義の今の時代、キー局・地方局にかかわらず、地上波テレビはもちろんダメ。盛況な映像プラットフォームに企画書を持っていっても苦い顔。携帯電話のキャリアなどが展開する媒体でもけんもほろろ。
仮に現場担当者が面白がってくれても、決裁権のある上の人たちから止められる。どこに行っても壁ばかりの行き止まり状態で、最後の最後にたどり着いた場がユーチューブでした。
そんなユーチューブでしたが、自分たちだけの責任でなんでも自由にできる。上司のハンコも不要。広告審査に落ちて凹むことはあるけれど、当座のお金さえ目をつむればやりたいことはとことんできる。
つくづく、ユーチューブという場で「エガちゃんねる」を始められて良かったと実感しています。さまざまな壁にぶち当たったおかげで、ユーチューブという次のステージのドアが開きました。
ちなみに、この先に出てきそうな「エガちゃんねる」にとっての新たな壁は……。2025年には「江頭さんの還暦」という大きな節目が待っていまして、還暦=「年齢の壁」があるかもしれません。あまりそれを言うと江頭さんに怒られそうですが(笑)。
しかしその壁はきっと、新しいステージへのドアになるはずです。
今、何か大変なこと、うまくいかないことに遭遇しても、あきらめずに動き続けていれば、きっとそれはどこかで次のステージへの「ドア」になる……そんな発想で頑張っていきましょう。
両手が空いてないと
チャンスを掴みにいけない
学生時代から憧れを抱き、ADを経て、念願叶ってたどり着いたテレビディレクターという職種。多い時は5本のレギュラー番組を担当していました。
ただ、その時はほぼプライベートの時間はゼロ。企画を考え、リサーチを重ね、台本を作り、収録をして、編集をしての毎日で、まさに綱渡りの自転車操業の極みのような働き方でした。
2020年に「エガちゃんねる」を始めて丸4年が過ぎようという今、僕も40代中盤となり、働き方はかなり変わりました。
動画公開の前日は編集作業で1日かかりきりになりますが、それでもある程度ゆとりを持ちながら、プライベート・家族との時間も持ちながら、昔のような「寝る時間がない」というような状況にはならずにいられています。
そして僕にとって今は、時間的にも精神的にも、いくばくかの余裕を作ることが大事だと思っています。
20代、30代のギリギリの状態で仕事をしてきたことは今となっては大きな財産になっていますが、今は自分の時間と心に余裕があるからこそ、新しいチャレンジにも着手できる。人間、両手が空いてない状況ではすぐには動けないし、チャンスを掴みにいけません。
「エガちゃんねる」で何か面白そうなチャレンジができるのであれば、すぐそれに飛び込める状態でいたい。エガフェス(編集部注/江頭2:50による笑いと音楽の祭典)をできたのも、余裕があったからこそだと思います。
最近は、自分の心にもスペースというか、余裕を作らなければ、の意識で日々を過ごしています。
トーク系、対談系は断る
ブレない江頭2:50の流儀
そして江頭さんは、「めちゃイケ」「みなおか」「『ぷっ』すま」という準レギュラー番組が揃って終了した2018年以降、本当に仕事がなくなって大変な時期がありました。でも、「エガちゃんねる」によってどん底状態を抜け出し、大好きな大人のお店にも気兼ねなく通える日々。むしろ、まもなく還暦を迎えようという芸人生活で、今が一番忙しいそうです。

『 エガちゃんねる 10億回再生 下品の流儀 』(藤野義明、宝島社)
ちなみに、どんなに忙しくなっても大人のお店に通う頻度は変わっていないという江頭さん。今でもブレることなく週2~3のペースで通っているそうです。海外ロケのあとは日々お世話になっているお姉様方にお土産を配ることもルーティン。
台湾ロケの際、少しお疲れだった江頭さんには、行きの飛行機を僕らよりも遅い便で手配して、少しでも休んでもらおうと配慮したつもりが、それではお姉様たちへのお土産を買う時間がない!とマネージャーでもあるブリーフ団Mに「代わりにお土産を買っておいて」と頼んでいました。
その時Mが「何人分あるといいですか?」と尋ねると、「11人分買っておいて」と返事をしていた江頭さん。ざっと10人ではなく、きっちり11人という正確さが江頭さんらしいですね。
ありがたいことに、最近では地上波のトーク系の番組や対談系の番組からも「江頭さんに出ていただきたい」という依頼を受けることもあります。が、やはりそれらは江頭さんらしい仕事ではありませんので、江頭さんは絶対に断ります。
そこは芸人・江頭2:50としてブレることのない働き方です。